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研究概要 (Research Overview)
 現代社会を維持するためには、医薬品、農薬、繊維、塗料、機能性材料など様々な有機化合物が必要不可欠です。よって、それらを合成するための有機化学は最も重要な基盤技術と言えます。有機合成の中でも、当グループは特にこれまで報告されていない新規反応や、環境に優しい有機反応の開発を行っています。また新しい配位子や触媒の設計・合成も手がけており、有用な分子を高選択的に合成することに成功しています。
 当グループは2020年4月に発足したばかりですが、積極的に学会参加や論文発表を行うなど、アクティビティの高い研究グループを目指しています。「何となく有機化学に興味がある」「将来的に研究職に就きたいかも」「自分の名前が載った論文を出版してみたい」という学生は当グループで研究してみませんか?Join us!!

現在、主に以下に示す研究テーマに取り組んでいます。
キラルクラウンエーテル–カリウム塩基触媒を用いる不斉反応の開発 
 不斉触媒は少量の不斉源から大量の光学活性物質を合成できるため、有機合成上極めて重要です。不斉触媒は二種類に大別されます。すなわち金属と不斉配位子から構成される不斉金属触媒と、金属を含まない有機分子触媒です。不斉金属触媒は多彩な不斉配位子と金属を組み合わせることが可能で、反応性や立体選択性の制御が容易なため、多くの不斉反応に利用されてきました。しかし中心金属は主としてパラジウム、ニッケル、ロジウム、ルテニウム、オスミニウムなどの遷移金属であるため、資源量に乏しく高価であり、また毒性が高いという問題もあります。一方、有機分子触媒は金属を含まないためこのような問題は存在しませんが、総じて反応性が低く適用可能な反応や基質に制限があります。よって、このような従来の不斉触媒が抱える問題を解決するため、新たな有用な不斉触媒の開発が求められています。
 アルカリ金属は地殻中に豊富に存在するため安価で毒性が低く、またイオン結合により対アニオンが高い求核性をもつため、これらの金属を核とする不斉触媒は上述した問題を解決できる可能性があります。本研究において重要なのは、アルカリ金属上にどのようにして不斉環境を構築するかという点です。当グループはアルカリ金属カチオンを捕捉することが知られているクラウンエーテルに着目しました。不斉配位子にするため、光学活性な1,1’-ビ-2-ナフトール(BINOL)部位を有するキラルクラウンエーテルを合成し、アルカリ金属特にカリウム塩基と組み合わせることで、不斉カリウム塩基触媒を調製しました。本触媒が不斉aldol–Tishchenko反応や不斉分子内オキサマイケル付加反応などに高い活性を示すことをすでに明らかにしています。
研究概要1-1.png
・第11回CSJ化学フェスタ (2021年) (P8-025)
・日本化学会第101春季年会 (2021年) (A15-1vn-06)
・日本化学会第101春季年会 (2021年) (A15-1vn-04)
カリウム塩基を用いる、アリルアルコールを前駆体とするホモエノラート等価体の新規調製法の開発 
 金属ホモエノラートはカルボニル化合物のβ位に求電子剤を導入できる重要な求核剤です。しかし、金属ホモエノラートの調製法は未だ限られています。これまでシロキシシクロプロパンやシクロプロパノールの開環を利用する手法が開発されていますが、これらの前駆体は合成に多段階を要する上、置換様式にも制限があります。また生じる金属ホモエノラートの求核性が低いため、求電子剤の適用範囲も狭いという問題もあります。よって、ホモエノラートの化学を一層発展させるには、入手容易な前駆体から求核性の高い金属ホモエノラートを簡便に調製する新手法の開発が望まれています。
 当グループは金属ホモエノラート等価体の入手容易な前駆体として、新たにアリルアルコールに着目しました。アリルアルコールに対し、カリウム塩基であるトリメチルシリルメチルカリウム(TMSCH2K)を二当量作用させると、水酸基のプロトンおよびC1位の水素原子が引き抜かれることで、カリウムジアニオンが生じます。このカリウムジアニオンは求核性の高いカリウムホモエノラート等価体と見なせるので、様々な求電子剤と反応しβ位が官能基化されたケトンが得られます。さらにβ位で反応した後もカリウムエノラート部位が残存するため、異なる求電子剤と連続して反応できる点も従来法とは異なる本手法の特長です。
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金属エノラートのコピー-1.png
・日本化学会第102春季年会 (2022年) (D202-4am-04)
日本化学会第102春季年会 (2022年) (D202-4am-03)
・第11回CSJ化学フェスタ (2021年) (P7-039)
・日本化学会第101春季年会 (2021年) (A15-1vn-05)
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